桜の花びらが降る頃、きみに恋をする
それからしばらく経った後も、俺はなにもやる気がおきずにいた。
蒼ちゃんのお父さんが事故に遭う瞬間を目の前で見てしまったから、そう簡単に笑うことができなくなってしまった。
それほど、ショッキングな出来事だった。
それに、蒼ちゃんは俺のことを覚えていない‥‥‥。
とてもショックを隠せなかった。
「おーい、陽向! 最近、元気ないじゃん! どうしたんだよ?」
学校に行けば、うるさいやつが1名。
「‥‥‥なんでもないよ」
「その割には、なにかあるって顔してる」
そして、図星を指してくる女子が1名。
幼馴染みの琉輝と美菜。
「ほんと、なんでもないから気にしないで」
今は、1人にして欲しい。
なのに‥‥‥。
「なんだよそれ! 気にしないでって言われたら余計気になんの! 少しぐらい教えてくれてもいいじゃん!」
なのに、こいつはずかずかと俺の心に踏み込んでくる。
「‥‥‥これは、俺の問題だから」
2人に言えるわけがない。
「なに堅いこと言ってんの! 最近のお前さ、変だよ! まったくと言っていいほど笑わなくなったし、ゲーム誘ってもそっちのけで1人で思い詰めてるし。こんなの、お前らしくないよ!」
「私も琉輝と同じ意見! 今の陽向、全然陽向らしくないよ」
‥‥‥俺らしくない?
思わず顔を上げた。
「別に話したくないなら、無理に話そうとしてくれなくていいけど。これだけは覚えとけ!」
ビシッと俺を指差す琉輝。
その瞳は、力強く俺を真っ直ぐに見つめていた。