桜の花びらが降る頃、きみに恋をする
「もうこうなったら、仕返しとしてこちょこちょの刑だ!」
なんとか琉輝からの攻撃を阻止した俺は、琉輝の後ろへと回って脇腹をくすぐる。
「うわっ、やめてくれ〜! それだけはまじで勘弁して〜!」
さっきとは立場が一変して、身を捩りながら叫ぶ琉輝。
「陽向もっとやっちゃえ!」
美菜からの指示でくすぐる手に力を込める。
「はは〜! 陽向、もうやめろって〜!」
悶える琉輝の姿がなんだか面白くて、
「あははっ!」
いつの間にか笑顔が溢れていた。
「あっ、いつもの陽向に戻ってる!」
明るい美菜の声。
そこで、俺はハッとした。
そうだよ‥‥‥。
俺がくよくよしてどうするんだよ?
今、1番辛いはずなのは蒼ちゃんだ。
お父さんを失ったこと相当ショックだっただろうし‥‥‥。
もしかしたら、また自分を責めてしまってるかもしれない。
1人で苦しんでいるかもしれない。
そう思った俺は、学校が終わるとすれ違う町の人に蒼ちゃんのことを訪ねてみることにした。
「あの! この辺りで双葉 蒼ちゃんって子知りませんか? 小学3年生の女の子です」
声をかけ、蒼ちゃんの情報を伝えてみるが‥‥‥。
「さぁ、私に言われても知らないわ。ごめんね、役に立てなくて」
「‥‥‥いえ」
気を取り直して、他の人たちにも聞いて回るが、返ってくる答えはどれも同じだった。