桜の花びらが降る頃、きみに恋をする

「蒼、待って。話がしたいんだ」

昼休み、弁当を手に美菜のところに向かおうとする蒼を引き止めた。

蒼に本当のこと話そう。

それでいて、俺の気持ちも。

けれど、蒼は目の前にいる俺を横切って美菜のところへと向かっていった。

‥‥‥はぁ。

思わずため息をついた。

美菜と電話した日から確実に美菜からも無視されてるけれど、好きな人からスルーされるって相当きつい。

ーー『もう、なにも聞きたくないよ! お願いだから、これ以上私に優しくしないで!』

俺はもう、蒼に話しかけることも触れることも許されないの?

「あ〜ぁ。お前、完全に嫌われてるじゃん」

「‥‥‥うるさい」

のこのこと現れてきた琉輝に、力なくそう返した。

琉輝は、俺の前の席に向き合うように座ると弁当を広げる。

俺も同じように弁当を広げると、おかずを口に運んだ。

‥‥‥もう4人で弁当食べることもないのかな。

いつしか、心の中はぽっかり穴が空いてしまっている。
< 165 / 209 >

この作品をシェア

pagetop