桜の花びらが降る頃、きみに恋をする
「そういえば、美菜から聞いたんだけど、蒼ちゃんじゃなくて別に好きな子がいるって本当なのか?」
口をもぐもぐさせながら、そう訊ねてきた琉輝。
「‥‥‥本当じゃないよ」
「でも、お前ってさ、ずっと探していた人いただろ? その人のこと今、どう思ってるんだよ?」
その探していた人こそが蒼なんだよな。
なにも知らない琉輝にどう言えばいい?
どう説明すればいいのだろう?
「なにも言わないってことは、やっぱりその子のことが好きってことなんじゃん」
琉輝は勘違いしてる。
その子と蒼は別人だって。
「‥‥‥蒼、なんだよ。探していた人は」
訂正するべく、俺はぽつりと呟いた。
「えっ、なに? ずっと探してたって、蒼ちゃんを?」
そう尋ねた琉輝に、俺はゆっくりと頷いた。
「じゃあ、お前が好きな人は蒼ちゃんってこと?」
恥ずかしいこと聞くなよ‥‥‥。
そう思いながらも、またもや頷いた。
「ほうほう。って、なんで蒼ちゃんを探すようになったわけ?」
「それは‥‥‥」
“あの日”があったから。
俺は、琉輝にその話を伝えるのを躊躇ってる。
その内容があまりにも残酷だから。
7年経った今も、俺はまだ言えそうにない。