桜の花びらが降る頃、きみに恋をする
それから、美菜と弁当を食べ終わって、自分の席に戻ると神崎さんに声をかけられた。
「双葉さん、ちょっといい?」
「‥‥‥う、うん」
緊張が走りながらも頷いた。
神崎さんに連れてこられた場所は、あの時と同様、体育館裏。
もう、神崎さんに突き飛ばされそうになっても陽向は助けてはくれない。
私が陽向を突き放したから。
少しの間、沈黙が訪れる。
「あのさ、前から思ってたんだけど‥‥‥」
先に口を開いたのは、神崎さん。
強気な神崎さんだと思っていたけど、その口調は優しくて少しびっくりした。
「双葉さんは、一ノ瀬くんのこと好きなんでしょ?」
あの時は、陽向を好きになる前だったから肯定できなかったけど、今ならちゃんと言える。
「好きだよ」
陽向のことを諦めようとしてるのに、私は全然諦めきれていない。
むしろ、好きが溢れてしまっている。
「だったら、なんで一ノ瀬くんのこと避けるの?」
「‥‥‥陽向には、好きな子がいるから」
そう伝えると、神崎さんは怪訝そうな顔をした。
「はぁ〜? あんた、なに言ってんの? どう見ても、一ノ瀬くんの好きな子ってあんたでしょ」
私は、すぐさま首を横に振った。
神崎さんは知らないかもしれないんだけど、陽向には忘れられない子がいるんだって。
ずっと、その子を探してしまうぐらい大切な人で、陽向は今でもその子のことが好きなんだって私には分かるから。