桜の花びらが降る頃、きみに恋をする

お父さんたちの手をとって、屋外にあるイルカが泳いでいるプールへと向かうと、ベンチにはたくさんのお客さん。

ちょうど空いていた席に並んで座って、今か今かと待ち構える。

しばらくすると、イルカショーが始まった。

体をクルクル回転したり、輪投げを1つも落とさずにキャッチする3頭のイルカ。

飼育員さんの合図に合わせて一斉に勢いよく水中へ飛び出して、空高くジャンプするイルカに私は終始釘付けだった。

そして、そろそろ終盤に差し掛かった時イルカの飼育員さんが言った。

「ショーの最後にイルカとふれあいができます! したい人はいますか?」

その問いかけに、たくさんの人が挙手をする。

「蒼も手を挙げてみたら?」

「うん!」

お父さんに大きく頷いて手を挙げると‥‥‥。

「では、今、元気よく手を挙げてくれたそこの女の子! ステージに来てくださーい!」

飼育員さんが私を選んだことが分かった。

イルカに触れ合えたらいいなって思っていたけど、まさか本当に触れ合うことができるなんて!

「行っておいで、蒼」

お父さんたちに見送られ、ステージへと向かった。

お客さんみんなの視線が集まって、なんだか落ち着かない。

「お名前は?」

飼育員さんに聞かれて、緊張しながらもなんとか答える。

「‥‥‥双葉 蒼です」

「じゃあ、蒼ちゃん! そこにいるイルカを優しく触ってみて」

すぐ近くには、1頭のイルカが水槽から頭を出してつぶらな瞳でこちらを見つめていた。

か、可愛い……!

しゃがみ込んで、イルカの頭を優しく触ってみると、不思議な肌触り。

イルカに癒されて、いつの間にか緊張が吹き飛んでいた。

「ありがとう」

お礼を伝えるとイルカは嬉しそうに水槽の中を優雅に泳いで行った。
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