桜の花びらが降る頃、きみに恋をする
「‥‥‥はぁ」と神崎さんはため息をついた。
「あんた、まだ気付いてないの?」
「な、なにを?」
頭の中には、はてなマークが浮かぶ。
「みんなからスマイル王子と呼ばれている一ノ瀬くんが、あんたにだけ特別な笑顔を見せてるってこと」
「‥‥‥特別な、笑顔? 私にだけ?」
そう聞き返すと、神崎さんは力強く頷いた。
「そう。あんたにだけ。私や他の子たちには、決して見せない嬉しそうな顔をしてるの」
陽向って、みんなにも同じ笑顔を見せてると思ってた。
「それに、さっき、月城くんと教室を出て行こうとする時だって、一ノ瀬くんはあんたのこと大事そうに見てたよ。ううん、さっきだけじゃない。いつも、一ノ瀬くんはあんたのことしか視界に入ってなかった」
時々、陽向からの視線は感じていたけど、いつもだったなんて。
「だから、私はあんたには敵わないって思ったから一ノ瀬くんのこと諦めようとした。それなのに、好きなのにあんたは簡単に手放してしまうわけ?」
「‥‥‥」
「あんたはこのままでいいの? 一ノ瀬くんに気持ち伝えないまま終わってもいいの?」
首を横に振る。
「そんなの‥‥‥いやだよ」
本当は、陽向を避ける度に心が苦しい。
「なら、ちゃんと向き合って話すしかないじゃん!」
私は、陽向と向き合うことすら逃げてる。
本当のこと知るのが怖いから。