桜の花びらが降る頃、きみに恋をする

それからしばらく館内を巡ったり、お土産を選んだりして、水族館から出る頃にはもう夕方になっていた。

「蒼、今日楽しかった?」

隣を歩くお父さんが尋ねる。

「うん! とっても楽しかったよ!」

いまだ絶えない笑顔でそう伝えると、「それなら良かった」と横にいるお母さんも笑う。

今日は本当に、たくさんの生き物に癒されて、イルカに触れ合う貴重な体験もできて、水族館に来て良かった。

「あっ! そういえば、蒼にプレゼントがあるんだ」

そう言ってお父さんは、バッグの中からあるものを取り出した。

「さっき、お土産屋さんで買ったんだ。はい、これ」

そう言って私に渡してくれたのは、水色のイルカのキーホルダー。

「可愛い〜!」

お父さんからの予期せぬプレゼントに嬉しくなって、手に乗ったそれをじっくりと眺める。

イルカの部分は立体になっていて、まるで本物のイルカが飛び跳ねているかのようだ。

それに、小さなサイズで、バッグなどに付けられるように金具も付いている。

大好きなイルカに、私の好きな色を選んでくれるお父さん。

「ありがとう、お父さん! 凄く大事にするね!」

そう伝えると、お父さんは私の頭を優しく撫でてくれた。

この時の私は、ずっと笑顔が耐えない日々が続くと思っていた‥‥‥。
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