桜の花びらが降る頃、きみに恋をする
「それより、私のお父さんは?」
私がそう尋ねると、男の子は暗い顔をしてなにも答えなかった。
なんだか嫌な予感がしてゆっくり辺りを見渡すと、そこには無惨な光景が広がっていた。
車の前方は壊れていて、破片が地面に散乱している。
少し先には、あちこちから血が流れでているお父さんが横たわっていて、見知らぬ男性の人がお父さんの胸に手を当て必死に圧迫している。
幼いながらも、危険な状態だということははっきりと分かった。
女性の人は傷の手当てをしていて、そのすぐ近くでお母さんが泣き崩れていた。
「お父さん‥‥‥」
ウソ、だよね‥‥‥?
こんなの、ウソだよね?
「お父さん‼︎」
大きな声で叫んでみてもお父さんは目を一向に開かない。
いやだよ‥‥‥。
お父さんがいなくなるなんて。
溢れ出した涙がポタポタと地面に零れ落ちる。
「私のせいで、こんな事に‥‥‥」
「それは違うよ」
男の子は、すぐさま私の言葉を否定した。
「で、でも‥‥‥!」
こうなってしまった事に変わりはない。
全部、私がいけないんだ‥‥‥。
そう伝えようと男の子を見る。
けれど、男の子は、私の目をしっかりと見て慰めるようにゆっくり言葉を発した。