桜の花びらが降る頃、きみに恋をする
伝えたい想い
なんで‥‥‥。
なんで、今まで忘れていたのだろう。
大切な記憶なのに、どうして今まで思い出せなかったのだろう。
これまでのことを振り返ってみれば、いろいろと思い当たることたくさんあったはずなのに。
高校入学式で、きみが1番最初に口にした言葉。
『やっと会えた』
陽向は、私に会えたことに喜んでいたんだ。
『蒼』
私が陽向を知る前から、陽向は私の名前を知っていた。
なのに‥‥‥。
『どうして私の名前知ってるの?』
そう訊ねた私に、陽向はウソをついた。
『あそこの扉に座席表貼ってあったでしょ? それで覚えたんだ』
私のためを思って、初めて会った“フリ”をしたんだ。
『俺には、蒼のこと分かるから』
お父さんがなくなって、ちょうど7年が経った日。
泣いている私に、陽向はあの日と同じように私を抱きしめてくれた。
それに、陽向にあの日の出来事を打ち明けた時も‥‥‥。
『蒼のせいなんかじゃないよ。蒼は、なにも悪くない。だから、自分を責めないで』
あの時とまったく同じ言葉で、私を慰めてくれた。