桜の花びらが降る頃、きみに恋をする

伝えたい想い


なんで‥‥‥。

なんで、今まで忘れていたのだろう。

大切な記憶なのに、どうして今まで思い出せなかったのだろう。

これまでのことを振り返ってみれば、いろいろと思い当たることたくさんあったはずなのに。

高校入学式で、きみが1番最初に口にした言葉。

『やっと会えた』

陽向は、私に会えたことに喜んでいたんだ。

『蒼』

私が陽向を知る前から、陽向は私の名前を知っていた。

なのに‥‥‥。

『どうして私の名前知ってるの?』

そう訊ねた私に、陽向はウソをついた。

『あそこの扉に座席表貼ってあったでしょ? それで覚えたんだ』

私のためを思って、初めて会った“フリ”をしたんだ。

『俺には、蒼のこと分かるから』

お父さんがなくなって、ちょうど7年が経った日。

泣いている私に、陽向はあの日と同じように私を抱きしめてくれた。

それに、陽向にあの日の出来事を打ち明けた時も‥‥‥。

『蒼のせいなんかじゃないよ。蒼は、なにも悪くない。だから、自分を責めないで』

あの時とまったく同じ言葉で、私を慰めてくれた。
< 187 / 209 >

この作品をシェア

pagetop