桜の花びらが降る頃、きみに恋をする
私のお母さんを知っていた訳を聞いた時‥‥‥。
『‥‥‥今の蒼には、言えないんだ』
その時、私はまだあの時のことを思い出せてなかったから。
『いつか話す時が来たら、ちゃんと伝えるから。それまで待っててくれる?』
本当に、待っていてくれていたのは陽向で、私が思い出せる日を信じてくれていたんだ。
『そんなこと、しなくてもいいのに』
『どうしてもしたいんだ』
陽向が私のお父さんの写真に、手を合わせた理由。
それは、あの日、陽向も事故の瞬間を見ていたから。
『陽向は誰かを探すようになったんだ。小学校卒業しても中学校卒業しても。きっと、陽向にとって忘れられないほど大切な人だったと思う』
今なら、琉輝くんが言っていた言葉の意味がやっと分かった。
その“大切な人”っていうのは私で、陽向はずっと私のことを探してくれていたんだ。
陽向は、いつだって傍にいてくれて私を支えてくれていた。
私を守ってくれていた。
なのに‥‥‥。
なのに、私は‥‥‥。
『もう、なにも聞きたくないよ! お願いだから、これ以上私に優しくしないで!』
陽向のことなにも知らずに傷つけた。
陽向に、最低なことをした。
お互いに、ちゃんと話せばすれ違うことなんてなかったかもしれないのに。
陽向に謝らなきゃ。
そして、自分の気持ちも伝えなきゃ。