桜の花びらが降る頃、きみに恋をする
美菜のお部屋を出て、エレベーターのボタンを押す。
でも、2つとも下に行っていてなかなか上の階まで上がって来ない。
会いたいのに!
今すぐ会いたいのに!
ふと、近くには非常階段。
居ても立っても居られなくなった私は、すぐさま階段を駆け登る。
「‥‥‥はぁ‥‥‥はぁ」
息を切らしながら、312号室へと向かう。
「あれっ? って、蒼ちゃん?」
なぜか、その扉の前には片手にビニール袋を持った琉輝くんの姿。
「こんなに泣いてどうしたの⁉︎」
私の様子を見た琉輝くんは、あたふたと慌てる。
私は、袖でゴシゴシと涙を拭った。
「琉輝くん。私、思い出したよ! 陽向と出会ったあの時のことを」
「やっと、思い出したんだね!」
私は、大きく頷く。
「陽向に会いたくて、ここに来たんだけどいるかな?」
そう伝えると、琉輝くんはさっきまでの明るいテンションは消えて申し訳なさそうに眉尻を下げた。