桜の花びらが降る頃、きみに恋をする

「はぁ‥‥‥はぁ‥‥‥」

息を切らしながらも、目指していた公園へと駆け込んだ。

ブランコや滑り台の前を通り過ぎると、見えた先は屋根が付いている休憩所。

そこのベンチに座っている人物。

やっぱり、ここにいた。

下を向いていて、まだ私に気づいていない様子。

私は一旦、その場に足を止め、涙をそのままに大きく息を吸い込んだ後、名前を呼んだ。

「陽向‼︎」

「‥‥‥!」

驚いた陽向は、俯いていた顔を上げた。

「蒼‥‥‥」

久々に呼ばれた名前に、さらに涙が溢れ出す。

ずっと、きみの声が聞きたかった。

もっと近くで聞いていたかった。

陽向の元へ駆け寄ると同時に、陽向もベンチから立ち上がる。

陽向とちゃんと向き合うのは久しぶりで少し緊張するけど、みんなが背中を押してくれたんだ。

その期待に応えたい。

乱れた呼吸を整えると、私は陽向に向かって頭を下げた。

「陽向、ごめんなさい‥‥‥!」

地面にぽたぽたと涙が零れ落ちる。

何度謝っても謝り切れない思いでいっぱいで、スカートをぎゅっと握りしめた。

「私、陽向の気持ちを知らずに酷いこと言って傷つけた。何度も避けてごめん‥‥‥それに‥‥‥」

ずっと、陽向を苦しませていたこと。

「あの日の事故直後のこと、今まで思い出せなくてごめん」

「‥‥‥!」

「本当に、ごめんなさい‥‥‥」

陽向が許してくれるかどうか分からないけれど、なんとしてでも陽向に謝りたかった。

一瞬の沈黙が訪れる。

でも、その沈黙を破ったのは陽向だった。
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