桜の花びらが降る頃、きみに恋をする
「最初は、ただ蒼が元気でいることが分かったらそれでいいって思ってた。だけど、蒼を見つけられない日々がだんだんもどかしくなって、いつしか会いたい気持ちが増えてたんだ。それに、蒼は分からないかも知れないけど、あの時、病室で眠っている蒼に約束したんだ」
約束‥‥‥。
ーー『また逢おうね』
「“また逢おうね”って」
夢の中で何度も聞こえた声と重なった。
男の子の声の正体は、陽向だったんだ。
何度も私の名前を呼んでくれていたよね。
「ちゃんと、届いていたよ。夢の中で」
そう伝えると、陽向はにこりと笑った。
「俺たちさ、7年もかかったけど約束通り逢うことができたね。高校の入学式で、やっと見つけることができた。高校生になった蒼を」
入学式の日、私に声をかけてくれた陽向。
あれは、たまたま隣の席に座った私に声をかけたんじゃなく‥‥‥。
「陽向は、最初から分かっていたんだね。あの時の私だってこと」
「うん。でも、初めはあまり自信持てなかったけど、そのイルカのキーホルダーで確信したんだ」
手に持っているスクールバッグを見てみると、水色のイルカのキーホルダーが夕日に照らされてキラリと光った。