桜の花びらが降る頃、きみに恋をする

ーー『あの子が拾って渡してくれたのよ』

ーー『事故直後、蒼の傍にいた子よ』

いつかお母さんが話してくれた“あの子”は、陽向のことだったんだ。

「これって、あの時、陽向が拾ってくれたんだよね?」

そう再確認するように尋ねると、陽向はコクリと頷いた。

「本当は、蒼が目覚めたら直接渡すつもりだった。けど、あの頃はまだ子どもで夜遅くまでいること許されなくて‥‥‥だから、蒼のお母さんに託したんだ」

お母さんとの接点は、そこだったんだ。

陽向は、直接渡せなかった代わりに、また逢う約束をしてくれた。

「陽向、ありがとう」

なにかが頬を伝う。

約束もそうだけど、もしかしたら、お父さんから貰ったこのイルカのキーホルダーが私たちを繋ぎ合わせてくれたのかもしれない。

そう思うと、不思議な気持ちだ。
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