桜の花びらが降る頃、きみに恋をする
「ほんと、蒼って泣いてばかり」
「な、泣いてないよ」
慌てて手でゴシゴシと拭うけれど、全然止まらない。
陽向が一歩前にでた気がした。
それと同時に、涙を拭う私の手が止められた。
「‥‥‥っ」
掴まれているところは熱くて、ドクンっと心臓が鳴る。
ずっと触れられたかった。
陽向に触れたかった。
「蒼のそういう強がりなところも、泣き虫なところも、無邪気な笑顔も、動物が好きなところも、あの頃と変わってなくて良かった」
いつか言っていた陽向の言葉を思い出す。
ーー『そりゃあ、笑顔がとっても可愛くて、動物が大好きで、どこか強がりなのに、泣き虫な蒼って思ってたよ』
あの時、もしかしたら陽向は昔の私の印象を言っていたのかもしれない。
「だって、俺は‥‥‥」
次の瞬間、陽向の手が私の頬にそっと触れ、見上げる形になる。
「そのままの蒼が好きだから。初めてイルカショーで蒼を見た時から、ずっと蒼が好きなんだよ」
「‥‥‥!」
いきなりの告白で、目を見開いた。
「これは冗談なんかじゃない。本当のことでずっと蒼を大切に思ってた」
陽向の目は、いつになく真剣そのもので私は逸らすことなんてできない。
「高校入学式でまた出逢うことができて凄く嬉しかったし、それに高校生になった蒼は、さらに可愛くなってて、少し大人っぽくなってて‥‥‥」
そこで、陽向は一拍置いた。
見つめる陽向の瞳が揺れる。