桜の花びらが降る頃、きみに恋をする
「蒼、どこ行ってたの?」
皐月とは別れ再び教室に戻ると、陽向は待っていてくれていた。
「ごめんね! ちょっと、皐月と話してたんだ」
「皐月? それって神崎さんのこと?」
不思議そうに尋ねる陽向に、私は笑顔で頷いた。
「そうだよ。この前、皐月が私の恋を応援してくれたんだ。それに、友達にもなれたんだよ」
そう伝えると、陽向はほっと胸を撫で下ろした。
「良かった。蒼になにかされてないかずっと心配だったんだ」
離れていた間も、陽向は私のこと心配してくれていたんだ。
そのことを知って、心がじーんと温まる。
すると、陽向は笑顔で私に右手を差し出した。
「蒼、一緒に帰ろう」
「うん!」
その手に、自分の手を重ねる。
行きと同様、陽向と手を繋いで他愛ないやりとりを交わしながら家へと向かう。
「あのさ、蒼‥‥‥」
「どうしたの?」
「今度、俺の両親に会わない?」
「えっ?」
私は、びっくりして陽向を見上げた。
そういえば、陽向のご両親とまだ1回も会ったことがない。
「本当は、ずっと蒼と会わせるの遠ざけてた。父さんと蒼は、昔、病室で会ったことがあるから、いつかバレてしまうんじゃないかって思っていたから」
あの日、病室で会った先生は陽向のお父さんということか。
思い返してみれば、陽向と少し似ているような。
「でも今は、蒼があの時のことを思い出してくれたからもう遠ざける必要なんてない。それに、昨日、両親に蒼のこと話したら『会いたい』って言ってくれたんだ」
その言葉に嬉しくなった。
「私も会いたい! 会って、あの時のことのお礼を伝えたい」
そう伝えると、陽向は笑って私の頭を優しく撫でてくれた。