桜の花びらが降る頃、きみに恋をする

向かった先は、誰もいない屋上。

部活の時間が始まったのか、グランドを走っている運動部の掛け声が時折聞こえてくる。

‥‥‥私には、部活をする勇気なんてない。

まして、この町にまだ馴染めていないというのに。

とても都会過ぎて、時々息苦しくなる。

私は、ゆったりとした足取りで少し歩くと、フェンスを背にして座り、膝を抱えて顔を埋めた。

思い返せば、あの日のことばかり。

何度後悔したか数え切れない。

涙が頬に伝う。

‥‥‥お父さん、ごめんね。

きっと、怒っているよね?

あれから7年が経ったけど、私はどうしていいか分からないよ。

どうやって生きていいか、もう分からない。

お父さんを失うぐらいなら、私なんて生まれてきた意味なんてあるのかな?

「蒼!」

「‥‥‥!」

声が聞こえてびっくりして顔を上げると、屋上の入り口のところには、走ってきたのか息を切らした陽向くんがいた。

「やっと見つけた。もう、探したんだよ」

どうして?

さっき、美菜ちゃんたちと別れたはずなのに。

「って、蒼?」

「あっ‥‥‥」

‥‥‥恥ずかしい。

泣いているところを完全に見られてしまった。

慌てて顔を隠し涙を拭うけど、止まることなく次から次へと流れてくる。

お願いだから、止まってよ‥‥‥。

陽向くんは、心配になったのか私の方へとゆっくり近づいてくる。

ダメ‥‥‥。

今は来たらダメ!

泣いている私なんて今すぐ見逃して欲しい。

明日からは、今日のことなんて何事もなかったようにするから。

どうか、今だけは‥‥‥。
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