桜の花びらが降る頃、きみに恋をする

「蒼ちゃん、いきなりごめんね。お父さんのことで、まだ頭の整理がつかないよね?」

「‥‥‥う、うん」

「ほんと、ごめんね。助けられなくて」

先生は何度も謝るけれど、私はなにも言えなかった。

「ケガのほうは大丈夫? まだ痛むかな?」

そう言って先生は私の右膝を指さした。

そこは、少し大きめのガーゼが貼られていた。

「‥‥‥ちょっとだけ」

少しじんじんと痛むけど、このくらいなら我慢できる。

「他に痛いところはある?」

「ううん」

首を横に振って伝えると、先生は少し安心した表情を浮かべた。

「蒼ちゃんが無事で良かったよ。もう少ししたら、お家に帰れるからね」

私を安心させるように先生は言ったと思うけれど、お家に帰ってもお父さんはもういない‥‥‥。

不意に、先生は真剣な顔になった。
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