桜の花びらが降る頃、きみに恋をする

「私は、中学の時から一ノ瀬くんのことが好きなの。何度振られても好きなの」

美菜ちゃんが言っていた長年のファンは、神崎さんのことだったんだ。

「ずっと一ノ瀬くんを追いかけて、高校に入ってやっと一ノ瀬くんと同じクラスになれたと思ったのに‥‥‥」

もしかして、陽向くんと一緒の中学校だったのかもしれない。

その中学校からこの高校に入学した人もそんなに少なくはないと聞いたことがある。

ちなみに、美菜ちゃんや琉輝くんもその人たちの2人。

「なのに、なんで? なんで、あんたなの? あんただけ特別扱いされるの?」

「と、特別扱いだなんてそんな!」

身振り手振り使って否定するけれど、逆に神崎さんの心に油を注いでしまい。

「調子乗らないでよ‼︎」

神崎さんに一喝されてしまった。

あまりの迫力に、体がビクッとなる。

「それに、あんたは好きでもないのに一ノ瀬くんの隣にいるなんて‼︎」

徐々に神崎さんが距離を詰め寄って来ていたことに気付くのが遅れた私は、次の瞬間には‥‥‥。

ーードンッ!

「‥‥‥っ!」

いきなり肩を強く押されてしまった。

バランスを崩し体が後ろに倒れる。

それは、7年前、お父さんが庇ってくれた時と同じで、目の前がスローモーションのようにゆっくりと。

ーーキキィィィ‼︎ ドンッ! ガシャン!

大きな音とともに、お父さんが撥ねられる映像が蘇る。

‥‥‥いやだ、いやだ!
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