桜の花びらが降る頃、きみに恋をする
陽向くんと肩を並べて歩く。
さりげなく車道側を歩いてくれたり、私の歩くペースに合わせてくれる。
とても優しくて紳士的で頼もしい陽向くん。
家まであと半分くらいの時だった。
ぽつぽつと雨が降ってきたのは。
それが次第に大雨と変わり、髪や制服が徐々に濡れていく。
「どうしよう‥‥‥私、傘持ってきてないよ」
「俺も」
天気予報では、雨が降るなんて言ってなかったのに。
家までは、まだまだ距離がある。
一体、どうすれば‥‥‥。
と思ったその時、不意に手を掴まれた。
「蒼、走って! 雨宿りしに行こう!」
陽向くんは私の手をとって引っ張る。
「う、うん!」
釣られるようにして私も足を速めた。
土砂降りの雨の中、2人で駆け出す。
「ねぇ、どこに行くの?」
近くに雨宿りできそうなお店はいくつでもあるのになぜか陽向くんは目もくれない。
宛先が分からずに訊ねたら「すぐそこだよ」と返された。