桜の花びらが降る頃、きみに恋をする

陽向くんに連れられ向かった先は、本当にすぐそこで広々い公園。

ブランコや滑り台の前を通り過ぎると、見えたのは屋根が付いている休憩所。

そこに、駆け込むとゆっくりと手が離れた。

「蒼、そこに座って」

「うん」

休憩所のベンチに腰を下ろし、スクールバッグを横に置いた。

雨のせいで、髪も制服も濡れてしまった‥‥‥。

家に帰ったら乾かさなきゃ。

そう思っていると、ふわっとなにか柔らかいものが私の頭にのった。

瞬時に、陽向くんがタオルをかけてくれたのだと分かった。

濡れた私の髪を優しく拭いてくれるけど、なんだか子供みたいで恥ずかしい。

しかも、至近距離で思わずドキッとしてしまう。

「ひ、陽向くんが風邪引いちゃうよ〜!」

「俺はいいんだよ。蒼が心配だから」

陽向くんだって雨でびしょ濡れになっているのに、自分の心配ではなく私を心配してくれる陽向くん。

きみは、こんなにも優しい。

陽向くんは、私の髪を拭き終わった後、タオルを首に巻いて自分の髪をゴシゴシと拭くと、私の隣に座った。
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