桜の花びらが降る頃、きみに恋をする

雨の日の公園は人気がなく、居るのは私と陽向くんだけ。

辺りを見渡すと、所々に木が生い茂っていて雨に打たれている。

花壇には紫陽花がたくさん咲いていた。

とても自然豊かな公園で、昔、住んでいた場所を思い出し、なんだか懐かしい気持ちになった。

「ここに公園があるなんて知らなかった」

引っ越しして2ヶ月経っても、私にはまだまだ知らないところがたくさんある。

「落ち込んだ時とかは、よくここに来るんだ」

「陽向くんにも落ち込む時ってあるんだね」

「そりゃあるよ。誰にだってあるんじゃないかな」

誰にだってある。

いつも笑顔を浮かべてる陽向くんも、辛いことがあったかもしれない。

人前に見せないだけで。

「‥‥‥ねぇ、陽向くん。私の過去の話、聞いてくれる?」

陽向くんには、話してもいいと思った。

あの日のこと、1人で抱え込むのはもう限界だったから。

「もちろんだよ。ゆっくり、蒼のペースで話していいよ」

そう言ってくれる陽向くん。

やっぱり優しい。
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