桜の花びらが降る頃、きみに恋をする

「蒼、ダメかな?」

さっきの真剣な表情とは打って変わって、陽向くんはまるで捨てられた子犬みたいな目で私を見つめる。

そんな目で見ないで〜!

反則だよ‥‥‥。

「ダメ、じゃない」

そう伝えると、ぱぁっと笑顔を浮かべた陽向くん。

「良かった! もし断られたらどうしようって思ってたんだ」

ほんと、前の私だったら確実に断ってたと思う。

笑えない私なんかがいても、きっと楽しくないだろうって思っていたから。

だけど、今は違う。

笑えない私を陽向くんが変えてくれたから。

徐々に前を向けてる気がするんだ。

「ところで、どこに行くの?」

「それは、蒼が思わず笑顔になれるとっておきの場所、猫カフェだよ」

「ね、猫カフェ⁉︎」

思ってもいなかった場所で、思わず聞き返してしまった。

私が以前住んでいたところは、田舎過ぎて猫カフェなんてなかったから、いつか行ってみたいと思っていた場所だ。

「そこに行こうかなと思うんだけどどうかな? 他に行きたい場所があったら聞くけど」

「猫カフェ行きたい!」

動物全般大好きな私。

嬉し過ぎて心が弾んでしまう。

「それなら、いっぱい楽しもう!」

「うん!」

陽向くんの言葉に、大きく頷いた。
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