桜の花びらが降る頃、きみに恋をする
不思議な夢
梅雨のシーズンが終わり、気温もぐっと高くなって季節は夏へと進む。
窓の外では、ミーンミーンと蝉が元気に鳴いているのが聞こえてくる。
それなのに、私は季節の変わり目のせいか体調を崩してしまっていた。
「ゴホゴホ‥‥‥」
咳をするたび喉が痛い。
38.2度の高熱で、横になっているだけでも体が怠い。
と、そこへドアをノックする音が聞こえた。
「蒼、風邪薬持ってきたわよ」
そう言って部屋に入ってきたのは、手には丸いお盆を持ったお母さん。
そこに乗せてあるのは、薬と水が入ったコップ。
それに、冷却シートまで持ってきてくれた。
「‥‥‥ありがとう、お母さん」
「このくらい、いいのよ」
とお母さんは優しく微笑んで、近くのテーブルにお盆を置くと私のおでこに冷却シートを貼ってくれた。
‥‥‥冷たくて気持ちいい。
「さっき、学校には連絡しておいたから。今日は、薬飲んでゆっくり休んでおくのよ」
「‥‥‥うん」
だる重い体をなんとか起き上がらせると、風邪薬を口に含み水で流し込んだ。
私からコップを受け取ると「蒼、なんかあったら言ってね」とそう言い残しお母さんはまたお盆を持ってキッチンへと戻って行ってしまった。