桜の花びらが降る頃、きみに恋をする

「蒼、横に座ってもいい?」

「うん、いいよ」

そう頷くと、陽向くんは徐々に近づいてベッドの横に座った。

私は、毛布から顔を出し体を彼のほうへと向けた。

「陽向くん、ありがとね。わざわざお見舞いに来てくれて」

「ううん。俺が蒼に会いたくて来ただけだから気にしないで」

とニカっと笑う陽向くん。

ほんと、何度見ても太陽みたいで眩しいその笑顔。

それに、思っていることをストレートに伝えてくれて聞いてるこっちが恥ずかしくなる。

‥‥‥って、そうじゃなくて!

さっきから気になっていたことがあるんだった!

「陽向くんって、お母さんと知り合いだったの?」

「えっ?」

いきなりの質問で、陽向くんはきょとんとした。

「さっき聞こえてた」

そう話すと、陽向くんはすぐに話の内容が分かったみたい。

「まぁ、知り合いというか、昔、1回だけ会ったことがあるだけだよ」

「どこで?」

そう訊ねると、陽向くんはなぜか顔を歪めてしまった。

「それは‥‥‥」

なんだか、言いづらそうな感じ。

少しの沈黙が走った後、ゆっくりと陽向くんが言葉を続けた。
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