桜の花びらが降る頃、きみに恋をする

「‥‥‥今の蒼には、言えないんだ」

「えっ?」

今の私には言えないって‥‥‥。

「それって、どういうこと?」

そう訊ねたけれど、陽向くんは教えてくれなかった。

「‥‥‥ごめん。いつか話す時が来たら、ちゃんと伝えるから。それまで待っててくれる?」

本当に、陽向くんは隠しごとが多い。

ことあるごとに秘密にされてしまうし。

陽向くんに聞きたいことたくさんあるのに、それ以上聞くことができなくて、ただ頷くことしかできなかった。

「ごめんね、蒼」

そう言って、陽向くんは優しく頭を撫でてくれた。

いつか、話してほしい。

私のお母さんのこともだけど、他にもいろいろと“なにか”を必死に隠していることも全部。

『さっき、となりの子と話してたけどなんの話してたの? てか、いつの間に仲良くなったんだよ?』

『‥‥‥いろいろとあって』

琉輝くんの問いかけに、言葉を濁した意味を。

『蒼は、本当に動物が好きなんだね』

前から、私が動物が好きなことを知っていた訳を。

それに、入学式で初めて会った時にきみが言ったあの言葉。

『やっと会えた』

陽向くんは、確かにそう言った。

まぁ、その後すぐに初対面だということが分かったけれど。

やっぱり、気になるよ。

気になることがたくさんあるよ。

でも今は、陽向くんが話してくれる日を信じて待つしかないんだよね。
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