桜の花びらが降る頃、きみに恋をする

「はい。蒼、あーんして?」

そんなの恥ずかしくてできない。

心臓がうるさいぐらい脈打ってる。

風邪で赤く染まった頬が、さらに赤くなってしまう。

「じ、自分で食べれるよ」

「だ〜め。風邪引いてる蒼に負担かけたくない」

「そんな、負担だなんて‥‥‥!」

私の言葉をスルーして、さらに私の口元に近づける陽向くん。

「ほら、早くしないと落ちちゃうよ?」

‥‥‥もう、陽向くんの意地悪。

意を決して口を開けた。

「あ〜むぅ」

その瞬間、いちごの甘酸っぱい香りが口の中に広がった。

ひんやりと冷たくて、それになめらかでとろける食感。

「どう? 美味しい?」

陽向くんの言葉に、私は大きく頷く。

「とっても美味しい!」

「なら良かった。もう1口どうぞ」

「って、なんでまたそうなるの?」

こっちは恥ずかしいのに、2口目をスプーンに取り私のほうに伸ばす陽向くん。

「いいじゃん。風邪ひいている時ぐらい、とことん甘えてよ」

陽向くんはとっても意地悪で、でも、とっても優しい。

気づけば、いちごプリンを完食した私。

こんなイケメンに食べかせてもらうなんて、もうお腹いっぱいだ。
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