桜の花びらが降る頃、きみに恋をする

そういえば、今日、美奈ちゃんたちはどうしてたんだろう?

朝、みんなにメッセージを送ったきりで、スマホはテーブルに置きっぱなしにしたままだからまだ見ていない。

もしかしたら、返事が来てるかもしれない。

「ねえ、陽向くん。今日、美菜ちゃんたちはどうしてた?」

「そりゃあ、蒼がいなくて寂しがってたよ」

「‥‥‥そっか」

「あっ。でも、2人して一緒に蒼のお見舞いに行くって言ってきたときはさすがに断った」

陽向くんの言葉に、私は首を傾げた。

「どうして?」

「あの2人も来たら、逆に蒼を疲れさせてしまうと思って。蒼には、安静にしててほしいから」

「ふふっ。ありがとう」

それから、しばらく他愛ない話をしていると、なんだか眠たくなってきた。

「蒼、少し横になったほうがいいよ」

「うん。そうしようかな」

ベッドに横になると、陽向くんは毛布をかけてくれた。

眠たいはずなのに、なかなか寝付けられない。

「ねぇ、陽向くん」

「ん? どうした?」

「‥‥‥ずっと、傍にいてくれる?」

お母さんの前では強がっていたけれど、本当は1人なんて大丈夫なわけない。

1人になるのが凄く凄く寂しくて‥‥‥。

起きた時に、誰もいなかったら不安になる。

陽向くんを求めるようにそっと右手を伸ばすと、陽向くんは笑顔で私の手をぎゅっと握ってくれた。

「もちろんだよ。ずっと蒼の傍にいるよ」

寂しさと不安でいっぱいだった私の心が、陽向くんの言葉で安堵へと変わる。

「だから、安心して眠っていいよ」

「ありがとう」

「おやすみ、蒼」

繋いだ手とは反対の手で私の頭を優しく撫でてくれて、私は夢の中に吸い込まれるようにゆっくり目を閉じた。
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