桜の花びらが降る頃、きみに恋をする
ここは、どこだろう‥‥‥?
明かりもない、先の見えない真っ暗な闇の世界。
辺りは、誰もいないのに。
『‥‥‥いちゃん』
どこからともなく声が聞こえてきた。
声からするに、幼い男の子の声。
最初のほうは上手く聞き取れなかったけれど、その子は誰かを呼んでいる。
そして、次の瞬間、はっきりと聞こえた。
『蒼ちゃん!』
えっ⁉︎
今、私を呼んだの?
もう、なにがなんだか私には分からない。
なのに‥‥‥。
『蒼ちゃん! 蒼ちゃん!』
その子は、必死に呼び続ける。
ねぇ、どこにいるの?
いくら探してもきみの姿がどこにも見えない。
不安に押し潰れそうになったその時、右手になにやら温かい感触が伝わってきた。
ーー“ここにいるよ”
まるで、心の声がきみに通じたかのように。
安心した私はその手を握り返した。
『起きて、蒼ちゃん‼︎』
その子のありったけの叫び声。