桜の花びらが降る頃、きみに恋をする

‥‥‥ギュッ。

「おっと、危ない危ない」

あまりの勢いで後ろに少しよろめきながらも、陽向くんが抱きとめてくれた。

おかげで倒れずに済んだけど、どうしてだろう?

抱きしめられただけで凄く胸がドキドキしてる。

「蒼、怪我してない?」

「‥‥‥う、うん」

心配してくれる陽向くんに、なんとか頷きを返すのがやっと。

‥‥‥って、あれ?

陽向くんの心臓も、とてもバクバクしてない?

それに、恐る恐る顔を上げてみると少しだけ顔が赤いような。

もしかして、私の風邪が移ってしまった?

「ひ、陽向くん! 大丈夫?」

そう聞くと、なぜか陽向くんは私から視線を逸らした。

「大丈夫だよ」

そう陽向くんは答えたけれど、気が気じゃない。

「で、でも‥‥‥!」

「それより、蒼」

「‥‥‥?」

背中に回していた陽向くんの腕がスッと離れた。

「学校、行かなくていいの?」

「あっ‼︎」

今、完全に忘れてた。

「って、うわっ! ご、ごめん!」

あまりの至近距離だったことに今さら気付き、慌てて陽向くんから離れた。

「全然いいけど、早くしないと遅れるよ」

「う、うん。そうだね」

そう頷いて陽向くんと一緒に学校に向かうけれど、なぜか緊張して平静を装うのに必死。

ほぼ毎日のように陽向くんと一緒にいたのに、彼に対してこんなにもドキドキしているのは、たぶん初めてなんじゃないかってぐらい。

昨日、風邪で学校休んだから?

お見舞いに来てくれた時、プリンを食べかせてもらったから?

その時のことを思い出してはまた身体が熱くなるのが分かる。

それに、さっき陽向くんに抱き止めてくれた時の温もりがいまだ消えないまま学校に着いた。
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