桜の花びらが降る頃、きみに恋をする
ーー翌日。
「蒼、おはよう!」
教室に入ってきた私に、陽向くんは笑顔で挨拶をしてくれた。
「‥‥‥お、おはよう」
私は、小さな声で挨拶を返し自分の席に着いた。
学校で誰かに『おはよう』と言われたのいつぶりだろう?
あの日以来、私は話しかけられても笑うことができず、仲良かった友達も私から離れていってしまった。
それからは、孤独な学校生活を送ってきたのだ。
「ところで、ずっと気になってたんだけど」
「‥‥‥?」
なんだろう?
『ずっと気になってた』って。
陽向くんのその言葉にこっちが気になる。
でも、次に飛びこんできたのはいたって普通の質問だった。
「蒼は、どこの中学だったの?」
陽向くんが気になっていたのは、私がどこの中学に通っていたのか気になってたみたい。
「学校名言っても、きっと分からないと思うよ」
そう答えると、案の定、首を傾げた陽向くん。
「えっ? どうして?」
「隣の県にある中学に通っていたから」
まして、田舎の町にぽつんとある中学校なんて知っている人にしか分からないと思うから。
なのに‥‥‥。
「そっか。隣の県だったんだ」
きみは、なにかを納得した様子だった。
「じゃあ、蒼は隣の県から電車で通学してるの?」
その問いに、私は小さく首を横に振った。
「ううん。この町に引っ越してきたから歩いて通っているよ」
「そうなんだ! ‥‥‥って、引っ越し? いつ来たの?」
「1週間前」
「えぇっ⁉︎ それって、最近じゃん!」
目を大きく見開いて驚く陽向くん。
私と違って、きみはコロコロと表情が変わる。
ーーその時だった。