桜の花びらが降る頃、きみに恋をする

「じゃあ、今、呼んで欲しい」

「えっ、今⁉︎」

「じゃなきゃ、蒼、呼んでくれそうにないから」

図星だ‥‥‥。

私より、陽向くんのほうが私のこと分かりきっている気がする。

もう、こうなったらやるしかない!

意を決して口にした。

「‥‥‥ひ、なた」

頑張って呼んでみたけれど、やっぱり恥ずかしくて顔を上げられない。

反応がなかなか返ってこなくて、不安になって恐る恐る彼を見ると、私に呼び捨てをお願いした張本人が驚いた顔で口に手を当て目を見開いて固まっている。

すると、まるでその魔法が解けたかのように、陽向くんは名前を呼ばれてとっても嬉しそうにくしゃりと笑うと私に手を伸ばした。

「蒼、良くできました!」

わしゃわしゃと頭を撫でられて、ますます恥ずかしい。

陽向くん、いや、陽向と距離が一気に近くなった気がして嬉しいと思う自分がいる。
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