そうだ、転職をしよう。
自分はどうだろう?何かしてみたいことはあるだろうか?
どうせなら自分の好きな、自分のできることを…

自分は料理ができる事をふと思い出した。

「…俺は…勇者を辞めたら、孤児院で食事でも作るか…俺の腕は悪くないらしいし。」

そう魔王の前でポツリとこぼす。

「あ、じゃああんた、店を出してよ。」

自分の絵の題名を考え続けていた魔王が、突然口を挟んできた。

「なんでだよっ!?」

突然の、突拍子もない案に面食らう勇者。
魔王は通常進行。

「学校は数年間行きたいんだ、学費を稼がなきゃならないんだよ。あんたの料理店で働く。あんたなら人望くらいあるだろ?」

「……。」

勇者は言葉も出てこなかった。
しかし…

…何事も、辞めたら何かしら驚く事だってきっとある。
元『勇者』と元『魔王』が同じ店で働く事があっても、そんなこともおかしくないかもしれない。

勇者はようやく、

「仕方無いなあ。考えてみるよ。」

そう言うとゆっくりと歩き出した。
魔王も自身が描いた絵を片手に、勇者の後ろを歩き出す。
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