学園怪談
 そして卒業式の朝……。美術室で彼は絵の前で息を引き取っているのを発見された。過労によるものだったのか、自殺だったのか分からなかったそうなの。もともと体も強い方じゃなかったしね。でもね、不思議なことに昨夜、当直だった黒田先生が見た時、絵の彼女は元通りに完成されていたけど、男の子の絵は描かれていなかったそうなの。でも朝、権兵衛君を見つけた時、間違いなく絵の中に彼に似た男の子の姿が描かれていた……。

「不思議な話よね。黒田先生は言ってた。絵の中の彼女の方も3年間も自分を思い続けてくれた権兵衛君のことを好きになっていたんじゃないかって。だから必死で自分を修復してくれた彼を、卒業式の日に自分の世界の中に呼んだんじゃないかって」
 紫乃さんは感慨深そうに話しながら、目を涙で潤ませていた。
「ロマンチックな話よね。私は絵の中の幸せそうな二人をみる度に胸がしめつけられるような切ない気持ちになるの。いつか私もそんなに一心に私を愛してくれる人と結ばれたいなーってね」
 紫乃さんはどこか遠くを見つめるような視線で祈るように両手の指を組み合わせた。
 彼女の話に胸が熱くなるのを感じつつ、次の話を聞くことにした。
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