学園怪談
一昨年の冬に合宿を行った時に、当時の僕達1年生全員が、先輩の一人から、その話を聞かされていたけど、半身男を見ることが出来たのは僕と林だけだった。そして今年は心配させまいと誰にも言っておかなかったところ、小坂君1人だけが霊感が高かったらしい。
 個室に移動を終えると、林は布団を敷きながら小坂君に言った。
「いいか、実を言うと、お前の見たソレは本当の幽霊だ。でもな、現れても何もしない。驚かすだけで、こっちに危害を加えない幽霊なんだ。だから大きな声とかを出すな。益々半身男を楽しませることになる」
「そ、そそ、そんな。無理ですよ、あんな恐ろしいもの!」
 小坂君は泣きながら林にすがるが、小坂君の家族は合宿が終わるまで旅行をしているらしく帰ることも出来ないので、仕方なく布団に横になった。
「寝てしまえ、朝まで目を開けるな。そうすれば見てしまうこともない」
 林はそう言うと、部屋の電気を消して窓際の布団にくるまった。
 小坂君は真ん中の布団に入ると、窓に背を向けて、僕の方を向いて寝た。
僕は廊下側の布団に入り、ゆっくりと目を閉じた。寒さも手伝ってか、僕達は次第に眠気に襲われた。
 ふと、ウトウトしていた僕は、うっすらと瞼を開けて、寝ぼけ眼で窓を見た。すると……。
 ……ヌウ~ッ。
 と、青白い腕がゆっくりと窓の上から垂れ下がってきた。
 ビクッ! と小坂君の布団が震えるのが分かった。
 ……ダメだよ、反応しちゃあ……。眠くて、夢心地の僕には声を出すことも起き上がることも出来なかった。まるで気持ちのいい金縛りにでもあっているかのようだったよ。
 ……そして腕から今度はゆっくりと肩……そして、顔が現れた。
「ヒィ……ウググ」
 小坂君の押し殺したような声が聞こえた。
 こっちを向いていたはずの小坂君は、いつの間にか窓の方を向いていたらしい。半身男の姿を見て悲鳴をかみ殺しているようだった。
 ……だめだ……眠い、あ、半身男が笑ってる……。
 僕は静かに意識が薄れていった。
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