学園怪談
 ……この学園の脇に神社があるだろう? まあ神社といっても本当に小さなものだし、正月になったって殆ど人は来ない寂しい神社だけどさ。ここにはね、あるお札が販売されているんだ。
 ……キミはどんなお札だか知ってるかい?
 そう。そのお札はね、長方形の薄い紙なんだけど、真ん中で線引きされていて、左側には幸福と書かれたスペースがあり、右側は不幸のスペースになっている
 昔からこの学園に伝わるおまじないの一種でね、そのお札にお願いするのさ。幸福を貰う代わりに不幸を払いますってね。
 例えば……。
『幸福……風邪を治したい。 不幸……今月のお小遣いは無し』
とまあ、こんな感じでね。それで賽銭箱の中に入れておく。そうするとね、なんと願いが叶っちゃうんだ。風邪を治す代償としてお小遣いを献上するというわけ。とは言っても、どちらも釣り合いがとれるくらいに同じ価値じゃないと願いは叶わないらしい。まあ当然のことだよね。
……昔、女子ハンドボール部に田島っていう女子がいたんだけど、彼女はとても真面目で、何事にも一生懸命な生徒でね。俺ら男子ハンドボール部と試合をしても田島は引けをとらない強さを持っていた。
そんな田島にも唯一の悩みがあった。
「……つ……いたたた……」
「タジー、大丈夫? あ、もしかして?」
「うん、昨日からね……」
 彼女はね、その……まあ、ズバリ言っちゃうと生理痛の酷い体質だったんだ。女性の生理の傷みは男には絶対に分からないけど、話に聞く限りじゃ鈍い痛みがしたり、なぜか頭痛や腰痛なんかもあったり、症状が重い人なんかは寝込んでしまう人もいるみたいじゃん。かわいそうにね。そんなものが毎月数日間も訪れるんだから、俺は男に産まれて本当に良かったと思ってる。
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