学園怪談
第4話 『トイレの花子さん』 語り手 能勢雅亮

 次に話をしてくれるのは能勢さんだ。彼はなかなかの2枚目で、非常に男女問わず人気があるらしい。山﨑さんと同じ3年生だそうである。
「学校の怪談の中でもやっぱりメジャーなものといえば『トイレの花子さん』だよね。もちろんこの学園にだって花子さんの話はあるんだよ」
 能勢さんはイスに座りなおしながら神妙な顔つきで話し始めた。

 ……僕は毎朝学園のトイレで用を足している。ごめんよ汚い話で。でもね、みんなが遅刻ぎりぎりに来る中、早めに校舎に入って誰も来ることのない特別室のある棟のトイレを使う。朝はとても清々しくて使い心地が最高なんだ。
 そこまで話すと能勢さんは話をいったん切った。
 ……でもね、最上階の……3階の音楽室の近くにあるトイレ、あそこのトイレだけは使うのは避けた方がいい。
 霊感がある程度ある奴なら何となく漂う空気が異常なことに気がつくはずだ。キミは霊感はある方なのかな?
 僕は自分で言うのも変だけど、人並みにはある方だと思う。だから、僕が実際に体験したことを教えてあげるね。
 ……僕が2年生だった頃の冬のある日、音楽の授業で音楽室を使った時に筆箱を置き忘れてきちゃったみたいでね、宿題の場所とかを書いたメモ書きとかもそこに入れてたんだ。宿題を忘れたらもの凄く怒る先生だったし、誰かに電話とかで聞くのも面倒だったから仕方なく取りに戻ったんだ。
 筆箱を忘れていることに気づいたのは部活が終わってからだったから……だいたい7時くらいだったのかな。冬だったこともあって外はもう完全に真っ暗だった。僕が音楽室に入った時にはもちろん誰もいなかった。吹奏楽部はこの日は休みだったらしくて、僕の筆箱は授業で使った席のすぐ脇に落ちていた。
 廊下に出ると、あまりの人気の無さに一瞬ゾクリと背筋が寒くなった気がしたよ。ただでさえ昼間もこの特別室の棟は人気が少なくて、誰かが曲がり角から出てきただけでもビックリしちゃうんだからね。キミも音楽室とか使ったことがあるだろうからその雰囲気は分かっていると思うけどね……。
 
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