学園怪談
彼女は毎日のように神社を訪れては願いを書いた。そして回数を重ねれば重ねるほど、願いは大きく、払う不幸も大きくなっていった。そんな毎日を続けているうちに頼みたい幸せはあっても、払う不幸が思いつかなくなってしまった。
『幸福……お金3万円 不幸……寿命を10日減らす』
「……まあ、最近は80歳くらいまでは平気で生きる世の中だし、ちょっとくらいね」 
ついには自分の寿命まで払うようになってしまった。
 ……まあ、自分の寿命が縮んでもお金を貰いたい人は多いよね、きっと。俺だって爺さまになった時の事よりも、今の生活の充実を図りたいけどね。
 田島は変わった。自分の思うとおりに願いが叶い、毎日がバラ色だった。そして神社での願い事はそれからも続けられた。
『幸福……志望校合格 不幸……寿命を3ヶ月減らす』
 全て神頼みの田島はまったく努力をしなくなった。勉強をしない、運動もしない、当然ながら学力はどんどん下がった。でも定期テストでは常にトップだった。志望校は県内最高峰の学力を有する名門校だったけれど、願いの叶う自分なら間違いなく合格できる。そんな変わり果てた彼女からは友人もみんな離れていった。
「ふん、別にいいわよ。高校に入ったらもっといい友達が出来るようにお願いすればいいんだから。私はみんなとは違うんだから!」
 そして、田島はついに何の苦労もしないままに高校の合格も決まり、高校での友達作りを祈願したお札を納めに来た。
『幸福……私に見合った素敵な友達、彼氏ができる 不幸……寿命1年減らす』
 賽銭箱の前に立った田島は、賽銭箱に溢れんばかりに納められている大量のお札を見た。
「な、何コレ?」
 自分のお札を納めると、その他の大量のお札が気になって仕方なかった。彼女は一瞬ためらったものの、山積みになっているもののうちの一つを取り上げて開いた。
『幸福……田島の寿命を1日縮める 不幸……私の寿命を1日縮める』
「……!」
 田島はお札を破り捨てた。そして、ギクリとした顔で手近なお札から次々に開いていった。
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