学園怪談
 しかし、ここで直ぐに帰ればよかったんだけど、実はその日に限って朝のお通じがなかったものだから急に便意を催してしまったんだよ。僕は迷ったけど仕方なく、一番近かった音楽室のトイレに入ることにしたんだ。
 中は薄暗くて、小便器が3つしかなく、大便器に至っては1こしかない。だから僕は迷うことなくその個室に入り込んだ。
……キミはこの学校の花子さんの噂がどんなものか知ってるかな?
 この学園の花子さんはね、とても可愛い声をしてるんだ。それでね、個室に入っている間中ずーっとシリトリをしてくるんだよ。
 私は能勢さんの話を聞きながら、とってもカワイイおかっぱ頭の女の子を想像した。
 ……でもね、このシリトリはルールがあってね。

《ルール》
①「ん」で終わってはいけない。
②一度使った最後の言葉で終わってはいけない。(つまり、『シリトリ→リュック→クリ』のように)

もしもこのルールを破ったら花子さんに殺されてしまうらしい。
 私は唾をゴクリと飲み込んで話の続きを窺った。
 ……それでね、僕がトイレで用を足し始めた時、何かの気配みたいなものを感じた。ビックリしたけど、誰か別の生徒が入ってきたんじゃないかと思って自分の事に集中していたんだ、すると……。
「……りんご」
 って、女の子の声らしきものが聞こえた。
 始めは何かの冗談なのかとも思ったけど、僕はその時、その誰かがドアを開けて入ってきた音がしなかったことに気がついたんだ!
「ご、ゴリラ」
 慌てて返事を返したよ。もし間が空きすぎたら何が起きるかわからないからね。
「……らくだ」
 女の子の声は面白そうな弾む声で続けた。
 『だ?』『だ』って何かあったかな……僕は一瞬頭の中が真っ白になったよ。だって普段は、リンゴ→ゴリラ→ラッパ→パンツ……とかって言ってたからね。
「……だ、だ、だんご」
 大根って連想してしまったんだけど、慌てて言い換えた。
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