学園怪談
 その後、一瞬の沈黙……。
「……ゴミ箱」
 彼女は一瞬考えたように間を取った後、そう続けてきた。僕のがセーフかどうか見極めていたのかもしれない。
「昆虫!」
 いいながら僕は急いで用を済ませて下着とズボンを穿いたよ。怖かったからね、少しでも早くその場から離れたかった。花子さんは個室に入っている間だけシリトリをしてくるから、出てしまえばこっちのものだと思った。
「うみうし」
 花子さんからの返事があり、ぼくは立ち上がるとカギを開けた。そしてドアを開けながら最後の返答を返した。
「信号!」
 言ってしまってからヤバイ! と思った。
 でも僕の言葉はドアを開けたのと同時だったからか、ドアの向こうには誰もいなかった。
 慌てて辺りを見回すけれど誰もいない。
「助かった」
 僕はホッと息を吐きつつ、手を洗おうと洗面台の前に立って鏡を見た。
 ……心臓が止まるかと思ったよ。
 そこには、女の子が映っていたんだ。でもおかしいのは女の子は宙吊りにでもなっているかのように逆さまだった。おかっぱ頭で、顔はまるで白粉(おしろい)でも塗っているかのように真っ白だった。そして、その顔には、にんまりと笑っている赤い目と口。白いワイシャツを着ているようだったけど、首筋からは赤い血が流れ出ていて僕の首に手をかけようとしている!
「……お兄ちゃんの負け!」
「うわああああああ!」
 転がるように入り口のドアに体当たりをして飛び出ると、ちょうど見回りに来ていた用務員さんにぶつかった。
「どうした!」
「あそこ! あそこに花子さんが!」
 彼に捕まりながらトイレを指差す僕の先には誰もいなかった。
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