学園怪談
 昨日見た女の子がいました。そして、その隣には私の良く見知った女の子が一緒に手鞠で遊んでいたのです。
「由真ちゃん!」
 私は叫んで彼女を呼びましたが、夢の中とあってなのか声が出ず、由真ちゃんは気づいてくれません。
 そして、そんな二人の手鞠は昨日と同じように手元から転がり落ち、暗闇の方へと消えていきました。
 すると、女の子と一緒に、由真ちゃんは暗闇へ手鞠を拾いに歩き出したのです。
『だめ……由真ちゃん。そっちにいったら……』
 キキイイイイ! ドン!
 私の耳に、嫌な音がはっきりと聞こえました。
 ……!
「きゃあああ!」
 私は跳ね起きました。寝汗をべっとりと掻いていて心臓は早く動いていました。妙な胸騒ぎがして、その夜は朝まで由真ちゃんの家の方をジッと見ていました。
 ……次の日、由真ちゃんは学園を休みました。話では夜に寝ぼけて2階の階段から落ちてしまい、足を骨折して病院に行っているという事でした。
 私は彼女の怪我の理由が何となくわかりました。そして、きっと次は自分の番であるという事も。
 ……その日の夜、私は三度目の夢を見ました。
『てんてんてん。てんてんてん……』
 今度は女の子の顔立ちや背丈までが、はっきりと見て分かりました。だって、私のすぐ隣で彼女は鞠つきをしているんですから。
『……てんてん手鞠の転がる方へ、手鞠の方へは行ってはならぬ。てんてん手鞠、てんてん手鞠、手鞠で遊ぼ、てんてんてん……』
 女の子の口ずさむメロディーに合わせて私も歌いました。手鞠で楽しげに遊ぶ少女は、よく見ると腕や足などに無数の擦り傷があり、頭は後頭部が陥没して、さらに左腕がおかしな角度に折れ曲がっていることが分かりました。
 そして、ある程度遊んだところで、女の子の手から手鞠が暗闇に向かって転がっていきました。
「あっ!」
 私と女の子は同時に声を上げ、手鞠を追って走り出しました。
『……てんてん手鞠の転がる方へ、手鞠の方へは行ってはならぬ……』
 私の頭の中に手鞠歌の一フレーズが浮かびました。
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