学園怪談
「あいつら……許しておけない!」
「わ、わ、待て淳!」
 慌てて徹が僕を引っ込めた。
「何をするんだよ、あいつら止めないとまたやるよ!」
「もう少し様子を見るんだ。まだあいつらが犯人かどうか分からないじゃないか!」
 僕は徹に言われ、頭に上った血を落ち着かせるように努めた。
 外では二人の声が小さくだが、はっきりと聞こえて来た。
「いいか、いくぞ~」
「はいはい、うまく狙えよ」
 ブン! ブン! パァン。
「ナイッショー」
 間違いなかった。二人はおもむろにバットを取り出すと、交代で花に向かってスイングを始めたんだ。一人が打っている間はもう一人はタバコを吸って、その煙を花たちにかけていた。
「許せない! あいつら許せないよ! もういいだろ徹!」
「ああ、俺も許せない! あいつら……な、なんだ、様子がおかしいぞ」
 徹の言葉に改めて二人の方を見ると、その異様な光景に僕は唖然とした。
「な、なんだおい! 絡みついてきやがる!」
「ひ、ひいいいい!」
 二人の男子生徒を植物のツルや根っこなどが捕まえていたんだ。アチコチから無数に伸びた植物は彼らの足や腰ににどんどん巻きついて、彼らの動きを封じた。
「た、助け……うぐっ」
「ひいい……あうえええ」
 植物のツルは彼らの口の中からも侵入し、体中を包み込んでしまった。
 僕らは身動き一つ取れず、黙ってその光景を見つめている事しかできなかったよ。いや、僕はもしかしたら襲われている彼らを見て、いい気味だと思っていたのかもしれない。
「ぎゃあああああ!」
「おえう、あげげげげげ」
 一人は体を引き裂かれて血飛沫を上げて死んだ。もう一人はまるで養分でも吸い取られるかのように干からびてしまい、二人とも亡骸は土の中に引き込まれるようにして消えた。
「……」
「……」
 僕も徹もお互い向き合ったまま無言だった。今見たのは夢だったのだろうか? それとも何かの幻覚?
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