学園怪談
第35話 『以心伝心』 語り手 小野田 紫乃
「以心伝心しようよ♪ 心に響くメーローディー♪ 私の無言の言葉を~、捕まえて~♪」
先程の斎条さんの歌声に、これまた劣らない程の歌声を紫乃さんが披露してくれた。曲はつい最近流行った『以心伝心』だ。
「いいよね~、以心伝心。私の一番好きな言葉なんだ。どんなに遠く離れていても、本当に大切な人とはいつも繋がってる。直に話せなくてもお互いを感じあうことが出来る……ロマンチックな事だと思わない?」
また紫乃さんはウットリと空中を見つめて悦に入ってしまった。
「そ、そうですね。離れていても言葉が通じるなら電話代もかからないし……」
「かあ~っ、これだから今時の若いもんは、そういう現実的な損得じゃなくてさ~」
紫乃さんは首を振り振り、おっさん臭く説教をしてくる。
「今回の私のお話はね、この『以心伝心』に関する切ないお話」
……。
人間が生涯で以心伝心できる相手に出会える確率は数百万、いえ、数千万分の一っていうくらいに稀な確率だそうよ……まあ、これはテレビの受け売りなんだけどさ。でもよく、『ビビッと来たんです。通じるものがありました』とか言って電撃結婚しちゃうカップルとかいるよね。数年後には平気で離婚したりするんだろうけどさ。こんな安っぽい通じ合いじゃなくてね、私の話に登場するのはね、あるカップルの話。
……十年くらい前に、ある二人の男女がいた。男の子の名前はユウリ君っていうんだけど、すごく気の弱い子でね、名前も女の子っぽいこともあってか、いつもいじめられる度に幼馴染の女の子、晶さんに助けてもらっていた。
「もう! ユウリも少しは男らしくしなさいよ!」
「グスグス、だ、だって~、あいつら強すぎるんだもん」
二人とも小学6年生。まもなく新座学園への進学を控えていた。今日は新座学園の隣にある高田文具店に買い物に来ていた。そして、中学の授業のために必要な筆記用具やコンパスなどを買った帰りに同級生にいじめられたのだった。
「ほら、ユウリにこれをあげるから。アンタも少しは強くなりなさいよ」
そう言うと、晶は文房具店で買ったペアになっていたキーホールダーの片方をユウリにくれた。
「以心伝心しようよ♪ 心に響くメーローディー♪ 私の無言の言葉を~、捕まえて~♪」
先程の斎条さんの歌声に、これまた劣らない程の歌声を紫乃さんが披露してくれた。曲はつい最近流行った『以心伝心』だ。
「いいよね~、以心伝心。私の一番好きな言葉なんだ。どんなに遠く離れていても、本当に大切な人とはいつも繋がってる。直に話せなくてもお互いを感じあうことが出来る……ロマンチックな事だと思わない?」
また紫乃さんはウットリと空中を見つめて悦に入ってしまった。
「そ、そうですね。離れていても言葉が通じるなら電話代もかからないし……」
「かあ~っ、これだから今時の若いもんは、そういう現実的な損得じゃなくてさ~」
紫乃さんは首を振り振り、おっさん臭く説教をしてくる。
「今回の私のお話はね、この『以心伝心』に関する切ないお話」
……。
人間が生涯で以心伝心できる相手に出会える確率は数百万、いえ、数千万分の一っていうくらいに稀な確率だそうよ……まあ、これはテレビの受け売りなんだけどさ。でもよく、『ビビッと来たんです。通じるものがありました』とか言って電撃結婚しちゃうカップルとかいるよね。数年後には平気で離婚したりするんだろうけどさ。こんな安っぽい通じ合いじゃなくてね、私の話に登場するのはね、あるカップルの話。
……十年くらい前に、ある二人の男女がいた。男の子の名前はユウリ君っていうんだけど、すごく気の弱い子でね、名前も女の子っぽいこともあってか、いつもいじめられる度に幼馴染の女の子、晶さんに助けてもらっていた。
「もう! ユウリも少しは男らしくしなさいよ!」
「グスグス、だ、だって~、あいつら強すぎるんだもん」
二人とも小学6年生。まもなく新座学園への進学を控えていた。今日は新座学園の隣にある高田文具店に買い物に来ていた。そして、中学の授業のために必要な筆記用具やコンパスなどを買った帰りに同級生にいじめられたのだった。
「ほら、ユウリにこれをあげるから。アンタも少しは強くなりなさいよ」
そう言うと、晶は文房具店で買ったペアになっていたキーホールダーの片方をユウリにくれた。