学園怪談
「いいの? 俺がもらっても」
「このキーホールダーはね、この新座学園で人気のお守りなんだって。二人が助け合って努力することを祈願したものなの。アンタも強くなって私が困ったら助けてよね」
 ……晶は思春期の特徴か胸が少し前にせり出しており、身長も150センチそこそこしかないユウリの頭一つ上に顔が来ていた。
 それに引き換え、ユウリの顔立ちは整っている上に肌は女の子ように色白。しかも虚弱で、ケンカは負けてばかりだし、スポーツも苦手、大人しくしていたら女の子と間違われることもあった程だ。
 二人は家も近く、一緒の幼稚園に通っていたこともあって、自然と幼い頃から気心の知れた仲だった。
 ……でも、いよいよ中学生になってからは周りの環境が二人の関係を変えた。
「ほら、ユウリ! しっかりしてよ。アンタはもう、本当にだらしないんだから」
「ご、ごめんよ晶」
 毎朝一緒に登下校したり、クラスが違うのによく話していたりと、二人のやり取りを見ていた他の小学校から来た生徒達は、面白おかしくからかいの言葉を投げかけた。
「晶ったらまるでユウリ君の世話焼き女房みたい!」
「二人は付き合ってるの~? いいな~仲が良くって」
 女子生徒の会話を聞きつけた他の生徒たちにも話は伝染し、学年中が二人の仲をもてはやした。
 二人の名前を書いたあいあい傘の落書きがいたるところに書かれ、二人が近くにいるだけでわざと突き飛ばして二人をぶつけたりした。
 ……思春期の子どもだからって酷いよね。え? 私はこういうことをやってないのかって? ん~、まあちょっとくらいはやったことあるけどさ……いいじゃん、私のことは別に。
 今までにお互いのことを気にしたことのない二人はギクシャクし始め、二人の距離は少しずつ離れていってしまった。登下校はもちろん、普段の日常においても少しずつ会話は減り始めた。
 しかし、それは何も噂されて嫌になったということだけが理由ではない。今までお互いの事を異性として見てこなかった二人が、少しずつだがお互いを意識し始めてしまったせいでもあった。
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