学園怪談
 そして、決定的な事件が起こった。
『スクープ! ~大人の階段登る?~ ユウリと晶の幼馴染以上の関係とは?』
 などと言った見出しで、学級新聞みたいなものが掲示板に張られていた。内容はユウリの家に用事で出かけた晶が、ユウリに手を引かれて家に招きいれられる写真を元に、面白おかしく文章を書きつけたものだった。
 その日、運悪く二人は朝一緒に登校してしまい、掲示板の前を通りがかった際に大勢の生徒に取り囲まれた。
「おっはよ~! ねえねえ晶、ユウリ君とどこまでいっちゃってるわけぇ?」
「おいおいおい、ちょっと赤裸々すぎませんか~二人とも~」
「ユウリ! もっと優しく! 優しくお願い~!」
 その言葉に全員がドッと笑い出し、二人を取り囲んだクラスメイト達のバカ笑いは留まることを知らず、二人は真っ赤になりながら黙って震えていた。
 しかし、その内に耐え切れなくなった晶は掲示板の新聞を破り捨てると、掲示板を叩いて怒鳴った。
「うるせえよテメエラ! いいかげんにして! 私はねえ、強い逞しい男が好みなんだ! ユウリなんてちっともタイプじゃないし、ユウリだって私以外に好きな女がいるんだから!」
 ユウリに好きな女がいるなんてことは全くの嘘だったが、晶の湯気が出るほどの怒りの形相と、涙に潤んだ瞳を見てユウリは咄嗟に言った。
「そ、そうだよ。俺たちは本当にただの幼馴染なんだ。それに俺には他に好きな人が……」
 そこまでユウリが喋り終わると、クラスメイト達もだんだん興ざめしてきたのか、黙ってその場から離れていった。
 あとに、仁王立ちした晶と、ションボリと肩を落とすユウリだけが残された。
 晶はユウリに背中を向けたまま、イライラとした態度で新聞を破り続けた。
「あの……ごめん」
 晶の手が止まり、振り向くのと同時に新聞の紙クズと罵声が飛んできた。
「ごめんじゃないわよ! ユウリが、ユウリがみんな悪いんだからね! バカ!」
 この時、ユウリは始めて晶の涙を見た。
 
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