学園怪談
……話を終えた徹さんはやれやれといった感じで頭を振った。
「とにかく、アイツの周りで事件が起こるのは間違いない。アイツには気をつけた方が……って、うわああ!」
 徹さんは悲鳴を上げた。いつの間にかモミが教室の中に入り込みこちらをジッと窺っていたからだ。
「うわ、出た! 早く、早くソイツを追っ払うんだ」
 たじろぐ徹さんをよそに、モミは目にも止まらない速さで、徹さんに飛びかかった。
「ひいい! 来るな! 来るな!」
 モミは避けた徹さんの後ろの壁にぶつかるようにして床に転がった。
「大丈夫ですか徹さん! あ!」
 私は見た。モミがバタバタと暴れる何かを前足で押さえつけ、もう片方の足でネコパンチをしているのを。
「この子、何か虫みたいなものに飛び掛っただけじゃないんですか?」
 私の言葉に、向かいの席の紫乃さんがビックリしたように席を立ち上がった。
「それ、スズメバチ!」
 紫乃さんはモミを指差しながら、ササッとイスの後ろにしゃがみ込む。
「ひえええ!」
 みんな慌ててモミから離れるが、モミはスズメバチとの格闘を終えたようで、死骸となったスズメバチを咥えて教室から去っていった。去り際には、徹さんの足に頭をこすり付けていた。
「もしかして……あの子は徹さんを助けたんじゃありませんか?」
「……へ? だってアイツの周りでは人が死んでいるんだよ? 今だってスズメバチは俺を刺そうとしてたかもしれないし……あれ?」
 そこで徹さんは考え込んだ。
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