学園怪談
「アイツがいなかったら俺は刺されてたかもしれなかったのか?」
 一同、無言のままうなずく。
「それに、体育館の時もそうじゃないですか? もしもモミが徹さんの注意を引かなかったら、窓に潰されて死んでいたかもしれない……まあ、これは代わりに死人がでちゃいましたけど」
 そう考えると今までの話も全て変わった見方が出来る。
 一つ目では首吊りの教室の側で誰かに気づいてほしくて鳴いた。二つ目では事件を予測してバスケットを止めさせようとした。三つ目の事件では、飛び降り自殺の前に脱ぎ捨てられた靴を片方、急いで運び誰かにしらせようとした。
「本当に……アイツはみんなの事を……」
 その時、スズメバチの処理を終えたモミが戻ってきた。
「モミ。お前って奴は……」
 徹さんを無視して窓際に寄ったモミはジッと窓の外を窺っていた。
「何が見えるんだモミ……ああっ!」
 その時、私達が見たものは、学園から数百メートル程離れている木造アパートが家事で燃えている光景だった。
「あそこにはこの学園の生徒が何人か住んでいるはずだぞ!」
 大ちゃんさんの声も空しく、建物は完全に火に包まれている。まだ消防車は来ていないようであるが、中に人が残っていたなら助からないのではないかと思えた。
「明日……あそこの生徒達は生きて来れるのかな……」
 ポツリと淳さんがつぶやくように言った。
「なあ、モミよ。お前は本当に俺達を守ってくれているのか? それともやっぱり悪魔の使いか何かなのか?」
 泣き笑いのような顔でモミを見つめる徹さんに、モミは答えることなく静かに教室を出て行った。
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