学園怪談
「きっといい事がありますように」
 美鈴先生は30歳。女性としてはもう結婚を意識していて当然の歳だ。しかし、これまでに付き合った男性とはことごとく破局。まあ、教師なんていう特殊な仕事だから、なかなか出会いがなかったのかもしれないし、時間の拘束なんかもあって、普通の仕事の彼とはすれ違いが多いのかもね。
 そんなこんなで男の人と縁のなかった美鈴先生にもご利益があったのか、素敵な男性との出会いが訪れた。
「へえ~っ、商社マンなんだ。すごいじゃん。玉の輿かもよ?」
 赤羽先生が先輩をもてはやす。
「ちょっと、ちょっと。まだ知り合ったばかりなんだから何も先のことなんて考えてないわよ~」
 テレながら、まんざらでもない表情の美鈴先生。30歳とは思えないお茶目な性格が可愛らしい女性だ。
 ……美鈴先生は再び神社へとやって来た。
「神様ありがとう! ご利益があって素敵な男性と知り合えました!」
 賽銭箱にいつもより多めのお賽銭を投げると、感謝の気持ちを素直に言葉に出した。
「……違うよ」
 その時、美鈴先生の耳に子供の声が聞こえた。
「え? だ、誰かいるの?」
 その声に、お堂の中から僅かな反応があった。
「アンタの願いを叶えたのはオラだ」
 見ると、小さな子どもがお堂の中からこっそりと美鈴を見つめていた。
「あ、あなた……が?」
 美鈴先生は子供のかもし出す独特な雰囲気と、現代に似つかわしくない格好から彼? それとも彼女? は普通の人間ではない事を感じ取った。
「オラの名はマコト。座敷わらしのマコトだ。アンタの願いはもう終わりか?」
 結局、男か女か分からない名前だが、そんなことはどうでもよかった。
「あなたが? 座敷わらし? じゃあ、じゃあ、願い事を何でも叶えてくれるの?」
 半信半疑ではあるものの、自分へのご利益を感じた美鈴先生は、マコトにもう一度願い事をしてみた。
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