学園怪談
第48話 『消失!』 語り手 斎条弘子
「ふぁ~あ」
大ちゃんさんが大あくびをした。
「うふふ。もう眠いですよね。私ももうそろそろおねむです。でももう少し頑張りましょうか」
斎条さんは壁の時計を確認すると話し始めた。
……今は3時半だ。
「みなさんは人間の5感をご存知ですか?」
「5感?」
えーと、たしか……視覚、触覚、嗅覚、聴覚……あといっこ何だっけ?
「5感とは視覚、触覚、嗅覚、味覚、聴覚の5つです」
ああ、そうそう。そうだった。味覚を忘れてしまっていたよ。
「この5感は人間誰しも生きるのに必要不可欠なものですよね、でも、もしもこのうちの一つを失うとしたら、みなさんならどれを手放しますか? 今回の話はこのうち、嗅覚を無くした男の子のお話です」
……。
「た、助けて……。誰か、助けて……」
事故というものは必ず予想もしていない時に起こるもので、菅沢君を襲った不運な事故もそのうちの一つだった。
……今年の入学式からまだ1週間あまりが過ぎた頃でした。
菅沢君という私の隣の席の生徒が、非常階段から誤って転落。3階の高さ(およそ20メートル)からまっ逆さまに転落したにもかかわらず無傷だったんです。
……と、この内容については本人が私に教えてくれたものです。
「聞いてくれよ斎条。俺さ、マジで死んだって思ったんだよ」
私は喜々として話しかけてくる彼の話に興味深々だった。
「へぇ~、それで、どうなったの?」
「いやさ。あ、もうダメだ。とか思ったらさ、突然頭の中に声が聞こえて来たんだよ。『命を救ってやろう。ただし、お前の5感のうちの一つを差し出せ』ってね」
菅沢君の話はマユツバものだが、私はその後で、彼の話を信じないわけにはいかない事件にも遭遇した。
「5感かあ……何がいいんだろうね。私なら……う~ん。難しいなあ。どれも必要じゃない?」
「そうだろう? でもな、俺も背に腹はかえられないから選んだよ。それは……嗅覚さ」
「きゅ、嗅覚? じゃあ、菅沢君は何も匂わないわけ?」
「ふぁ~あ」
大ちゃんさんが大あくびをした。
「うふふ。もう眠いですよね。私ももうそろそろおねむです。でももう少し頑張りましょうか」
斎条さんは壁の時計を確認すると話し始めた。
……今は3時半だ。
「みなさんは人間の5感をご存知ですか?」
「5感?」
えーと、たしか……視覚、触覚、嗅覚、聴覚……あといっこ何だっけ?
「5感とは視覚、触覚、嗅覚、味覚、聴覚の5つです」
ああ、そうそう。そうだった。味覚を忘れてしまっていたよ。
「この5感は人間誰しも生きるのに必要不可欠なものですよね、でも、もしもこのうちの一つを失うとしたら、みなさんならどれを手放しますか? 今回の話はこのうち、嗅覚を無くした男の子のお話です」
……。
「た、助けて……。誰か、助けて……」
事故というものは必ず予想もしていない時に起こるもので、菅沢君を襲った不運な事故もそのうちの一つだった。
……今年の入学式からまだ1週間あまりが過ぎた頃でした。
菅沢君という私の隣の席の生徒が、非常階段から誤って転落。3階の高さ(およそ20メートル)からまっ逆さまに転落したにもかかわらず無傷だったんです。
……と、この内容については本人が私に教えてくれたものです。
「聞いてくれよ斎条。俺さ、マジで死んだって思ったんだよ」
私は喜々として話しかけてくる彼の話に興味深々だった。
「へぇ~、それで、どうなったの?」
「いやさ。あ、もうダメだ。とか思ったらさ、突然頭の中に声が聞こえて来たんだよ。『命を救ってやろう。ただし、お前の5感のうちの一つを差し出せ』ってね」
菅沢君の話はマユツバものだが、私はその後で、彼の話を信じないわけにはいかない事件にも遭遇した。
「5感かあ……何がいいんだろうね。私なら……う~ん。難しいなあ。どれも必要じゃない?」
「そうだろう? でもな、俺も背に腹はかえられないから選んだよ。それは……嗅覚さ」
「きゅ、嗅覚? じゃあ、菅沢君は何も匂わないわけ?」